2024年4月から相続登記が義務化されます

災害に関する記述があります。苦手な方はご注意ください。

タイトルの話題に入る前に、少し前置きのお話を。

先日NHKが能登半島地震で倒壊した家屋の公費解体について特集しているのを見ました。
能登半島地震で「半壊」や「全壊」となり、全額公費で解体される家屋はおよそ2万2000棟と想定されていますが、どうやら解体に必要な手続きはあまり進んでいないようです。

その理由はいくつかあるようでした。
・手続きに必要な書類が良く分からない
・所有者全員の同意を書面で提出することが難しい
・家の名義が誰か分からない

あるご家庭の住居は、築およそ100年、随分と長いこと相続がなされておらず、法務局で登記事項証明書を取得したところ高祖父の名義になっていたとか。

高祖父って祖父母の更に祖父…!?

「所有者全員と言われても…」と途方に暮れてしまいそうなお話です。行政(自治体)側としても一人一人の話を聞く時間は取れず、どうしても事務的な対応になってしまうのではないかと思います。どちらも悪くないのにも関わらず、です。

相続登記義務化と相続土地国庫帰属制度の意義

こうした所有者問題が繰り返される中、今年4月1日に相続登記が義務化されました。
遡ってみると、昨年の4月には、相続土地国庫帰属制度が開始しています。
法務局のスローガンは「なくそう!所有者不明土地」。どうしてこのような啓蒙をしているのか、少し掘り下げてみます。

実は以前こちらの記事でも取り上げた「相続土地国庫帰属制度」ですが、東日本大震災がきっかけで検討が進められた制度なんです。
前回は相続する人目線の記事にしましたが、今回は自治体の視点に立って書いてみます。

2011年3月11日、記憶に残る大震災でした。
多くの人が津波で被災して住むところがなくなったため、自治体は新しい住宅地を津波が来ない高台に建てようと、土地を買おうとしました。ところが、そこで所有者不明の土地がかなりたくさんあることが分かったそうです。
明治時代から名義が変わっていないような土地もたくさんありました。公共事業のために土地を買い取る(用地取得、または用地買収といいます)のに時間がかかってしまい、結果として震災復興が遅れてしまった、という経緯があります。
相続土地国庫帰属制度と相続登記が義務化の背景には、所有者の所在を明らかにし、万が一があったときの対応の遅れを解消するため、ひいてはその所有者を迅速に救うためという意義があるのでしょう。

従来の価値観で作られた制度の行方

もちろん新しい制度が出来ても、すぐに効果が出るわけではありません。そして、制度の恩恵が全員に一律で与えられるわけでもありません。(例えば、相続土地国庫帰属制度の対象外の土地もあります)
しかし、従来の価値観を前提にした制度が、今の時代を生きている人を守るために徐々に変わりつつあるのではないかと思います。それは相続だけでなく、戸籍や婚姻関係、働き方も同じです。
より過ごしやすく安全で、柔軟な生き方ができるように。士業と行政がタッグを組んで、スムーズに対応できるような仕組みを作っていけたら と、思わず大きなことを考えてしまいます。
こういう時にはまずは地に足を付けて。
行政書士として、どのような業務を行うにしても、今回したためた気持ちを忘れないように過ごしたいと思います。