相続の2024年問題

相続にまつわるルールが大きく変わります。
「2024年問題」で検索すると、物流関係に影響を及ぼす問題がピックアップされがちですが、相続についても大改正が予定されているため要チェックです。

例えば亡くなった親から、子が実家を受け継いだというパターンで考えてみましょう。

現行の制度(ASIS)
子は相続登記(=自分の名義に変更)をする義務はありません。
子が実家にそのまま住んでいる場合はまだ良いのですが、もし県外に出ていたり、結婚して別の家庭を作っていたりすると、実家は実質的な所有者が不明のまま空き家となってしまいます。こうした空き家は全国で急増しています。

相続した土地が不要な場合は、国に引き渡すことができます。2023年から始まった「相続土地国庫帰属制度」といいます。
ただし、国に引き渡すには一定の負担金が必要となるため、放置をする人が多くなっているのが現状です。

今後の制度(TOBE)
子の相続登記(=自分の名義に変更)が義務化されます。
子が実家(不動産)の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記しない場合、10万円以下の過料の支払いを裁判所から命じられます。

「知った日から」という言い回しは法律独特だなと思うのですが、言葉通りの意味です。
親が亡くなってから数年経過し、片付けの途中で親の遺言を見つけて、読んで初めて自分に相続されたことを知る場合もありますよね。親が亡くなったときではなく、読んで「知った日」から効力が発生するようにするよ、というものです。

しかし、知った日から3年とは言っても、兄弟間で遺産分割協議中に揉めてしまい3年以内に協議が終わらない…という場合が考えられますね。
その時は「相続人申告登記」を行うことで、子は申告の義務を一旦果たすことができます。遺産分割協議が終わってから3年以内に相続登記を行えば、過料を支払わなくても良いということになっています。

相続土地国庫帰属制度を利用する場合の子の負担

要らない不動産や土地は、上述の相続土地国庫帰属制度を使って国に返せば良いんでしょう?と思われるかもしれません。
しかし負担金は原則として最低でも20万円かかるうえに、国庫帰属が認められないと判断される場合があります。

国庫帰属が認められない土地(例)
・建物がある土地
・担保権が設定されている土地
・通路が含まれている土地
・崖や有体物が残っており、管理が大変な土地

つまり「国が受け取れる綺麗な土地にしてから申請してください」ということです。
その状態にするまでにも費用がかかることが容易に想像できるから放置する人が多いのに、それを義務化するのだから、負担増は目に見えて分かるというものです。

結局どうすれば良いの?

負担金や費用を出してでもおつりが来るような売却に向く場所であれば、第三者へ売却することを視野に入れて動くことができます。
住んでいる人がいるうちにリフォームをしたり、不要な有体物を撤去したり、メンテナンスを行う方が良いでしょう。

買い手がつかない、いわゆる負動産であるならば、遺産分割協議で他の誰かに相続をしてもらうか相続を放棄するかの二択になります。
基本的には対象の家を現に占有している人が、財産の保存義務を負います。法改正によって、実家から離れて住んでいるのであれば保存義務が免除されるようになりました。

それでは、対象の家を現に占有している人が相続を放棄した場合はどうなるのでしょうか?
相続放棄自体は可能ですが、他の人も全員相続放棄した場合は、占有者に保存義務が残ったままになります。
占有者は家庭裁判所で相続財産清算人を申し立てるか、国庫に帰属させない限りは保存義務が残り続けることになる、という流れです。

誰に頼めば良いの?

相続や登記に関するご相談先は、弁護士や司法書士です。
行政書士では裁判所への書類は作成できませんので、相続放棄のご相談は受けることができません。
(もし行政書士で相続放棄をやってるところがあったら注意してください。。。)

しかし、相続放棄の手続きは、テレビで見かける裁判と違い、法廷に立ったり裁判官や検察官と直接やりとりすることはありません。
裁判所とのやり取りは書類で行われますし、郵送で対応してもらうことも可能です。代理申請を専門家にしてもらわなければ出来ない類のものではない、ということを知っていていただければと思います。
専門家に任せるのは楽ですが、やはり相応の費用がかかります。
相続の前に準備できることがあるならば、面倒でも、少しだけでも確認されることをお勧めします。

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