フリーランス保護新法について調べてみた

え!?フリーランスは労働基準法が適用されないんですか!?

労働者と使用者の間の法律なので「それはそう」なんですが、字面だけ見るとあまりにも時代に合っていないというか。今年の社労士試験を受けるべく労働基準法の勉強をしている真っ最中なので、良い機会です。フリーランスを取り巻く最新の状況について確認することにしました。

まず、労働基準法は、昭和22年に労働者を保護するために作られた法律です。根底には「強い立場の使用者から弱い立場の労働者を守る」という考えがあり、職場で守らなければならない働き方の最低基準を規定している法律ですね。

しかしフリーランスは、労働基準法が適用されないため、取引上弱い立場に置かれています。そのため、業務を委託する企業から一方的に契約内容を変更されたり、報酬の支払いが遅れたりする等トラブルに巻き込まれがちです。インボイス開始の時にもひと悶着ありましたね。。(インボイス関連の漫画はこちら

他方で、フリーランス人口は年々増加しており、政府も、フリーランスも含めて柔軟な労働移動の実現や、自己実現のできる働き方を求めています。であれば、保護をしなければならないんじゃない?という法案が令和5年2月24日、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」(いわゆるフリーランス保護新法)が国会に提出され、同年4月28日に成立しました。
遅くとも今年、令和6年中には施行されると言われています。はたしてどのような法律なのか?今回はフリーランス側の目線で読んでいただくと良いと思います。

業務委託の際の書面の交付等

事業者が、フリーランスに対して業務委託を行うときは、以下の事項を記載した書面の交付又は電磁的記録の提供(メール等)をしなければいけません。言った言わないを防ぐため、口頭はNGです。
業務委託の内容や報酬、委託に関わる費用など、事業者(委託する側)が記載することが求めらます。ただ、契約書を作成しなければならないという訳ではありません。メールやチャットサービスでのやりとりをした場合、履歴を削除せずしっかりと残しておくことがフリーランスにも求められそうです。

中途解約・不更新の事前予告

事業者は、フリーランスと一定期間以上の間継続的に業務委託を行う場合に、急に契約を切ることが出来なくなります。中途解除するとき又は当該契約の期間満了後にその更新をしないときには、原則として、中途解除日又は契約期間満了日の 30 日前までに予告しなければいけません。ただし、業務委託時の書面に契約解除の理由が書いてある場合も。30日前に連絡が無かったからといって、事業者が絶対に法律違反というわけではありませんので、契約の内容は双方しっかりと確認する必要があります。
フリーランス側は、事業者に契約解除の理由の説明を求めることも可能です。おかしいな、と思った場合は泣き寝入りをせず、事業者へ確認を取りましょう。
難しい場合は、お手伝いさせてください!

報酬の支払に関する義務

事業者は、フリーランスに対し、役務等の提供を受けた日から 60 日以内に報酬を支払わなければならない…とされていますが、難しい場合もあるかもしれません。業種にもよりますが、期限について契約時に双方が合意していれば、必ずしも60日以内でなくても良い場合も存在すると思われます。
逆に、自分の業種であれば何日以内に確実に売上収益が出る!ということが分かるのであれば、契約時点でしっかりと決めておくことで、フリーランスの身を守る術になると考えています。

フリーランスと取引を行う事業者の禁止行為

事業者は、フリーランスにたいして下記の①~⑤をしてはいけないとされています。

① フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること
② フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
③ フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと
④ 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤ 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること

また、下記の⑥⑦から、フリーランスの利益を不当に害してはならないとされています。

⑥ 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
⑦ フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付の内容を変更させ、又はやり直させること

リテイク回数や返品特約など、事業者の好みや気分、もしくは担当者によって変わってしまうこともあり…クリエイターとしてはげんなりしてしまいますよね。そういったことをあらかじめ決めておけば、業務に集中できますね。

ハラスメント対策と出産・育児・介護との両立への配慮

事業者は、フリーランスが妊娠・出産・育児・介護と両立しながら業務に従事することができるよう、必要な配慮をしなければなりません。長期間の業務委託ではない場合にも、同様の配慮をする努力義務を負います(フリーランス保護新法13条2項)。

また、事業者は、フリーランスに対して、その言動によりセクハラ、マタハラ、パワハラ等の状況に至ることがないよう、フリーランスからの相談に応じ、適切に対応するために必要な措置を講じる義務を負っています。当然、相談を行ったこと等を理由として、契約解除その他の不利益な取り扱いをすることは認められません。
これは事業者側を守るための内容でもあると思います。ハラスメントと感じる境界線や、出産・育児・介護の大変さは、個人差があります。契約時点で相手方の状況を確認しておくことで防げるトラブルがあると考えます。

もちろん、事業者は、確認してからの契約解除やその他の不利益な取り扱いをすることは認められていません。フリーランス側は自身の状況を正しく伝え、配慮してもらえるように努めてください。

あくまでも業務を受託する側の事業者(特定受託事業者)のみであって、業務を委託する側の事業者は保護されていません。また、個人事業主であっても、従業員を雇用している場合には、対象となりません。他方で、法人であっても、他の役員や従業員がおらず、一人で事業を行っている場合には、対象となります。

違反した場合の対応

フリーランス保護新法に定める義務に違反した場合、国が、事業者に対して立ち入り検査をしたり必要な措置を勧告すること、または命令することが可能です。立ち入り検査を拒否した場合、50万円以下の罰金が科せられ、委託事業者が法人の場合には行為者と法人両方が罰せられます(フリーランス保護新法24,25条)。

フリーランスの方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口「フリーランス・トラブル110番」を厚生労働省が令和2年11月より設置しています。この記事は抜粋なので、全貌が気になる方はこちらからご確認いただければと思います。

まとめ

フリーランス・トラブル110番の相談実績を見ていると、20~40代、配送やデザイン関係のフリーランスの方からの相談が多いようです。事業者の方が懇意にしている年上の方だと、断りにくい場面もありますよね…。
調べていて、困った時にはプロに相談しながら、安心してご自身の業務を遂行していただけるように、力になりたい…という気持ちがより強くなりました。
そのためにも、今後も学び続けたいと思います!