自筆証書遺言書保管制度

お久しぶりです。インボイスのドタバタがようやく落ち着いてオタクらしい生活を取り戻しました。
SNSを見て、Huluを見て、YouTubeを見て、Kindleを読んで、先月と同じくらい忙しい日々です。困った。

最近は士業交流にも少しだけ参加してみたりして、先輩方とお話しする機会も得られました。その中で、やはり「業際問題」という単語は頻出です。士業は決められた範囲の中で日々戦っているのです。領域展開というやつです(違うかも)
はたして依頼された仕事は自分の業務の領域なのか。何度も確認して進めないと自分の首を絞めることになりかねないと思いながら粛々と仕事をこなします。

そんな業際絡みのお話。

令和2年7月10日から施行された自筆証書遺言書保管制度。
今までは自筆遺言だと「無くなった」「あるかどうか分からない」「どれが最新?」「捨てられた(!!)」など色々な問題がありましたが、この制度によって安心材料が増えることになりました。

・遺言書の保管申請時には,民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて,遺言書保管官の外形的なチェックが受けられます。
・遺言書は,原本に加え,画像データとしても長期間適正に管理されます。(原本:遺言者死亡後50年間,画像データ:同150年間)

法務省(https://www.moj.go.jp/MINJI/01.html)

めちゃいいやん。
と思ったのですが、法務省への申請は確か行政書士の業務の管轄外だったような…。今までの遺言業務は公証人による認証等の手続き代行だったので司法書士でも行政書士でも行うことが可能だったのですが、この制度ではどうなるのか?
確認しておきましょう。

自筆証書遺言書保管制度と行政書士の役割

法的な背景

自筆証書遺言の保管制度は、遺言書の安全な保管と遺言の効力を確実にするために設けられました。しかし、この制度に関わる申請業務は、法務省が指定する特定の専門家に限定されています。
司法書士は法務省管轄、行政書士は総務省管轄。法務省への申請は、司法書士の業務ということになります。

1. 任意代理の制限

法務省の案内によると、法に基づく各種申請において任意代理を行うことはできません。これは、遺言書の保管申請も含まれ、行政書士がこの業務に関与する余地はありません。

2. 司法書士の専属業務

遺言書保管制度に関わる申請書類の作成は、司法書士法により司法書士の専属業務とされています。このため、行政書士がこれらの書類を作成することはできないとされています。

3. 書類作成の例外

ただし、遺言書情報証明書や遺言書保管事実証明書の作成は、特定の状況下で他の士業者によって行われることがあります。これは、その士業法に基づく正当な業務の一環として許可されていますが、行政書士の業務範囲には含まれません。

自筆証書遺言保管制度と行政書士の関わり

つまり行政書士は、一般的には多様な法的手続きの支援を提供しますが、自筆証書遺言書保管制度の申請に関しては、関与することができません。残念。しかし遺言の書式チェックも法務省がやってくれるのであれば、行政書士に依頼するよりも依頼者としては安価で安心できるのでは?と思います。
一番は依頼者が安心できる環境を作ることなので、総括すると良い制度だなという印象です。

行政書士としては、クライアントに適切な専門家への紹介や、遺言書作成における一般的なアドバイスを行うことは可能と思います。保管申請には直接手を出すことはできないという理解をした上で、困っている人のサポートを行えるようにしたいですね。