Xにアップしたクイズ漫画で「事務所で出たボールペンのゴミは一般廃棄物か産業廃棄物か?」という問題を出しました。
答えは少しややこしく、業種と土地と材質によって変わります。少し整理してみましょう。
ほとんどのボールペンはプラスチック製。廃プラスチックの場合、東京都では産業廃棄物として扱われます。廃プラスチックでないもの、例えば紙ごみや厨芥類(生ごみ)は一般廃棄物となります。
※事業の中で出たゴミは、正確には「事業系一般廃棄物」と呼ばれます。
ただし、業種によっては同じものでも産業廃棄物になるケースがあります。たとえば飲食店で調理中に出る野菜くずや残飯は産業廃棄物。印刷業で出る紙くずも産業廃棄物に区分されます。なぜ業種によって異なるかというと、法律の根本に「発生する廃棄物の性質や量は業種ごとに大きく異なる」という考え方があるためです。
- 飲食店の残飯(動植物性残さ)
同じ“生ごみ”でも、家庭で出るものは量が少なく処理が容易。でも飲食店や食品工場では大量に出るため、衛生・環境リスクが高い。だから「産業廃棄物」として厳しく管理する。 - 印刷業の紙くず
家庭で出る紙ごみは資源回収に回せる程度。でも印刷業から出る紙くずはインクや薬品が付着していたり、大量に発生する可能性がある。だから「産業廃棄物」として指定。
同じ物質でも排出源(業種)によって“扱いの難しさ”や“環境負荷のリスク”が違うので、そこを基準に産廃かどうかを分けているわけです。
では飲食店でお客様がご飯を残してしまった場合、これは一般廃棄物と産業廃棄物、どちらでしょうか?
正解は一般廃棄物(正確には事業系一般廃棄物)。性質は「家庭での食べ残しとほぼ同じ性質」とされ、処理リスクも家庭ごみと同程度なので、一般廃棄物に分類されます。つまり同じ“食べ物のごみ”でも、どのプロセスで出たかを基準に区分しているんですね。
あなたの出したゴミは一般廃棄物?それとも産業廃棄物?
なんだか泉の精みたいになってしまいました。正直者のあなたにはどちらも差し上げ・・・あ、要らない?
そもそも廃棄物とは何か。これは「自ら利用せず、他人に売却もできないもの」(廃棄物処理法第2条)、その反対語は「有価物(売れるもの)」です。廃棄物が要らないのは誰でも一緒ですね。
さて、会社で出たごみのうち、従業員が個人的に出した飲み物の容器やお菓子の袋などは「一般廃棄物」にあたります。飲食店でお客様が残した残飯も同様です。これらは「事業系一般廃棄物」と呼ばれ、家庭から出る「家庭系一般廃棄物」と区別されます。
事業系一般廃棄物には、生ごみ(厨芥類)、紙くず、木くずなどが含まれます。東京都を含む多くの自治体では、事業者が自ら契約して適切に処理する責任があります。家庭ごみと同じ集積所に出すことは禁止されています。
実はあなたも知らないうちに産業廃棄物を捨てている可能性が!?
東京都を含む多くの自治体では、事業中に出た廃棄物について、事業者が自ら契約して適切に処理する責任があります。家庭ごみと同じ集積所に出すことは禁止されています。
では、リモートワーク中に出たゴミはどうでしょう?

実はこれも「家庭ごみ」か「事業系ごみ」かという扱いになります。コロナ禍で急速に普及したリモートワークについて、2022年の東洋経済の記事(参考リンク)では、本来は事業系ごみとして分ける必要があるにもかかわらず、実際には家庭ごみと一緒に集積所へ出され、事実上すべて無料で処理されていると報告されています。
私自身もここ数年は兼業行政書士としてリモートワークをしていましたが、上述の記事から3年経った今でも、会社から廃棄物に関して明確な指示を受けたことはありません。「既存の体制に乗っかったままでいいのだろうか?」と疑問を感じます。
特に紙ごみなどは個人情報を含む場合もあり、コンプライアンス上のリスクが無視できません。弁当容器程度ならともかく、業務資料を自宅ごみとして出してしまうのは大変危険です。
会社のゴミは会社で捨てる。これが一番安全で確実です。
あなたのゴミは大丈夫ですか?地域のルールに沿って正しく処理されるよう、普段何気なく捨てているものを改めて確認してみてください。
結果
東京都ルールに基づいたクイズ
廃棄物処理法と東京都条例に基づき簡易に作成。最終確認は必ず自治体や専門家へ。
産業廃棄物を捨てるための手続きを電子化で楽にしよう
さて、ここからは事業者の方向けの記事となります。個人の方でも「自分の会社はどうかな?」という気持ちで読んでいただけると嬉しいです。
建設業や飲食業など、業務を行う上でどうしても廃棄物が出る事業者もいます。産業廃棄物を捨てる場合、どのように捨てるか、誰に処分してもらうかといった処理契約や許可申請が必要になります。行政書士は、その法的手続きをサポートできる専門家です。
今回はその手続きの中でもしっかりと電子化されている「産業廃棄物マニフェスト制度」についてまとめてみました。事業者にとってお得な情報もありますので、最後まで読んでみてください。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)の仕組み
「マニフェスト」という言葉は、選挙の公約でも耳にしますが、実は産業廃棄物の世界でも使われます。英語の“manifest”には「積荷目録」や「乗客名簿」という意味があり、正式には産業廃棄物管理票と呼ばれます。
排出事業者(工場や会社)が廃棄物の処理を委託する際に必ず交付する書類で、廃棄物の種類・数量・収集運搬業者名・処分業者名などを記入します。マニフェストは複写式で7枚綴りになっており、収集・運搬・処分の各段階ごとに写しが排出事業者の元に戻ってくる仕組みです。最終処分が終わった時点では「E票」が戻り、それが適正処理の証拠となります。
A票 | 排出事業者の保存用 |
B1票 | 運搬業者の控え |
B2票 | 運搬業者から排出事業者に返送され、運搬終了を確認 |
C1票 | 処分業者の保存用 |
C2票 | 処分業者から運送業者に返送され、処分終了を確認(運搬業者の保存用) |
D票 | 処分業者から排出事業者に返送され、処分終了を確認 |
E票 | 処分業者から排出事業者に返送され、最終処分終了を確認 |
排出事業者の責任
ここで重要なのは、マニフェストの交付責任は排出事業者にあるという点です。運搬業者が記入していても、不備があれば責任は排出事業者に及びます。また、90日以内(中間処理)、180日以内(最終処分)に返却がない場合は、処理状況を確認し、必要に応じて行政へ報告しなければなりません。
さらに、マニフェストは排出事業者・処理業者ともに5年間の保存義務があります。再委託も原則禁止であり、不法投棄があった場合も排出事業者が責任を問われるため、管理は非常に重要です。
電子マニフェスト(JWNET)の活用
近年は紙の複写式マニフェストに代わり、電子マニフェスト(JWNET)の利用が広がっています。電子化することで以下のようなメリットがあります。
- 書類保管の手間を削減
- 処理状況をリアルタイムで確認可能
- 報告義務が原則免除(廃棄物処理法施行規則第8条の28第4項)
ただし、一部の都道府県や政令市では独自の様式や電子提出を求める場合があるため、導入時には事前確認が必要です。
行政書士がサポートできること
電子マニフェストは「聞いたことはあるけれど、具体的にどう扱えばいいかわからない」「現状は紙なので、やり方を変えるのは大変」という声が多い分野です。行政書士は以下のようなサポートが可能です。
- 電子マニフェスト導入の流れを整理
- 必要書類や提出方法の確認
- 報告書作成・提出の代行
こうしたフローを経て、排出事業者は安心して業務に専念できるようになります。
まとめ
産業廃棄物マニフェストは、「適正処理」と「責任の所在」を明確にするための制度です。電子マニフェスト(JWNET)の導入で大幅に効率化できる一方、法律に基づいた厳格な管理が求められます。
不法投棄や管理不備は企業の信用に直結するため、専門家の支援を受けつつ、正しく制度を運用することが重要です。
不明点や気になる事項がありましたら、行政書士にご相談ください。
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